【女の事件】とし子の悲劇・2~ソドムの花嫁
第31話
1月30日は、デリヘル店は生理休暇だけどローソンのバイトは夜10時からとなっていた。

空いている時間を利用して、特急うずしおとJR牟岐線の列車を乗り継いで小松島市へ行った。

行き先は、小松島市中田(ちゅうでん)町にあるお寺さんであった。

じゅんきの遺骨が丸亀市のお寺さんから小松島市の実母カタの実家の墓地に埋葬されていることを聞いたので、お墓参りをすることにした。

お墓参りの後、赤茶色のバッグを持っているアタシは住職さんと一緒に本堂に続く小道を歩きながらお話をしていた。

住職さんはアタシに、じゅんきの遺骨が実母カタの墓地に埋葬された理由は、章平と離婚をする時にじゅんきの親権を実母の方に移していたことであったと話した。

アタシは、こうきがあいこちゃんにきついDVを加えていたことや、じゅんきがあいこちゃんを犯した原因を住職さんにたずねた。

住職さんは、アタシの問いに対して撫養(むや・今の鳴門市)の両替商の主の2度目のムスメムコに原因があったことなど…複数の原因があったと答えた。

章平の父親は、2度目のムスメムコさんに甘やかされて育ったことが原因でいい子に育たなくなったことや、章平が過去に女性がらみのトラブルを繰り返していたことなど…住職さんは、アタシにすべてを話した。

夕方4時半頃、赤茶色のバッグを持っているアタシは、JR牟岐線の列車と特急うずしおを乗り継いで、高松に帰った。

ところ変わって、高松駅の待合室にて…

アタシが改札を出た時に、あいこちゃんがアタシの元へやって来た。

「ヤダ…あいこちゃんじゃないの…」
「とし子さん、お時間ありますか?」
「あるけど…どうしたのよ…」


あいこちゃんは大きくため息ついてからアタシになにか言おうとしていたが、言い出せなかったので、アタシが声をかけた。

「あいこちゃん。」
「何よ?」
「あいこちゃん…いいの…」
「いいのって…」
「坂出に帰らなくてもいいの?」
「アタシは、あの家にはいたくないのです。」
「そう…いたくないのね…」
「ええ…」

もしかしたら…

あいこちゃんは…

坂出の家に永久に帰らないかもしれない…

アタシは、あいこちゃんに今どこにいるのかを聞いた。

「あいこちゃん。」
「とし子さん。」
「今、どこで暮らしているの?」
「関係ないわよ!!アタシがどこで暮らしていようととし子さんには関係ないわよ!!」
「関係ないわよと言っても…ダンナ…」
「ダンナのことは出さないでよ!!とし子さん!!もし武方のクソ野郎がアタシのことを聞かれても知らないと言うてよね!!」

あいこちゃんは、アタシにこう言うたあと待合室から出て行った。

深夜11時過ぎに、アタシがバイトをしているローソンに武方さんがやって来て、あいこちゃんがどこへいるのか知らないかと言うたが、アタシは知らないと言い返した。

アタシは、古い方のお弁当が入っているキャリーを整理しながら武方さんに言うた。

「あいこちゃんがどこへ行ったのかをアタシに聞いてもアタシは知らないと言うているのよ!!アタシは章平のことはとっくに見離しているから、今さらアタシに助けてくれと言うてもダメなものはダメなのよ!!あんたね!!アタシは今バイト中なのよ!!店に居座るのだったら店長を呼ぶわよ!!」
「とし子さん、このままでは帰ることができないのだよ…あいこちゃんがいなくなったので、こうきさんが困っているのだよ…とし子さん、あいこちゃんの居場所を教えてください。の通りです。」
「断固拒否するわよ!!あんたは、人の職場に居座る気かしら!?」
「居座る気はありません…このままでは帰れないから困っているのだよ…とし子さん、この通りです…」
「うるさいわねダンソンジョヒ魔!!あんたは誰に頼まれてあいこちゃんを探しているのよ!!」
「誰に頼まれたって…こうきさんのおじさんから頼まれて探しているのだよ…あいこちゃんがいないから困っているのだよ…」
「どう困ると言いたいのよ!?」
「ごはんを作ってくれる人がいないのです…こうきさんのおじさんには嫁さんがいないのだよぅ…」
「甘ったれるのもたいがいにしなさいと言っておきなさいよ!!」
「とし子さん、章平さんは片方の目が失明して不自由になっているのだよ…」
「片方の目が失明した原因が色欲であることを章平は分かっていないのよ…こうきのバカおじは2度目父親に甘やかされて育ったことが原因でひとりで生きて行く力がつかないまま大人になったのよ!!嫁さんを粗末にすることを繰り返していたからバチが当たったのよ。」
「とし子さん…どうして人の家の悪口を言うのだね…」
「言いたくもなるわよダンソンジョヒ魔!!」
「とし子さん…」
「あんたは章平の家と何の関係があるのよ!!あいこちゃんのお母さまとどんな関係があるのよ!!もう頭に来たわよ!!」
「そんなことはいいから、あいこちゃんの居場所を教えてください。」
「拒否するわよ!!あんたは、あいこちゃんの居場所を聞いてどうしたいのよ!?」
「家族が心配しているから連れて帰るのだよ…」
「はぐいたらしいわね!!拒否するわよ!!」
「とし子さん…とし子さんの耳には聞こえないのかなぁ…行方不明になった家族の帰りを待ちわびている人の声が聞こえないのかなァ…」
「聞こえないわよ!!バカバカしい!!あいこちゃんにきつい暴力をふるっておいて、あいこちゃんが家出をしたから急に困る困ると言うなんて、弱虫よ!!あんたね!!DV男の家をかくまい続けるのであれば、アタシにも考えがあるわよ!!」
「とし子さん、そんなことはいいからあいこちゃんの居場所を教えてください!!」
「うるさい!!ダンソンジョヒ魔!!」

思い切りキレたアタシは、武方さんにお弁当のお好み焼きを思い切り投げつけた。

「とし子さん…何でお弁当を投げつけるのですか…」
「うるさいわね!!アタシのバイトの手を止めたから仕返しよ!!DV男の家をかくまい続けるのであれば、アタシの知人の組長に電話するわよ!!覚悟しておきなさい!!」

武方さんを怒鳴り付けたアタシは、店の中へ逃げ込んだ。

武方さんは、ぼうぜんとした表情でたたずんでいた。

店舗のロッカールームにて…

アタシは、ロッカーのドアを開けてドアについている鏡に自分の顔を写して顔を見つめていた。

アタシは、ほがそ(ぐちゃぐちゃ)の髪の毛を右手で思い切りかきむしった後、着ていた制服を脱いで、青色のブラウスを脱いで、ロッカーに思い切り叩きつけた。

ブラウスの下は、サックスブルーのブラジャーを着けていた。

しばらく鏡を見つめたアタシは、再びほがその髪の毛を右手で思い切りかきむしって、サックスブルーのブラジャーを思い切りちぎった。

何なのよ…

何なのよ一体…

アタシは、キーッとなってイラついたがむなしくなった。

そして、その場に座り込んでくすんくすんと泣いていた。
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