【女の事件】とし子の悲劇・2~ソドムの花嫁
第5話
その日の夜のことであった。

ところ変わって、塩江町安原上(やすはらかみ)の山林の雑木林にて…

「お願い助けて…命だけは助けて…お願い…イヤ!!」

高松市内で暮らしている22歳の女子大生がバイト先から帰る途中の道で、突然恐ろしい覆面をかぶった男数人に連れ去られて、無理やり車に乗せられた後、雑木林に連れて行かれた。

女子大生は、男たちに倒されて身体を押さえつけられた後、着ていた衣服を鋭利な刃物で切り裂かれて、シツヨウに犯さて、ボロボロに傷ついて恥ずかしい姿で亡くなった。

闇夜の雑木林に、女子大生の恐ろしい叫び声が響いた。

翌朝のことであった。

女子大生は、所轄の警察署の霊安室に安置されていた。

霊安室に、金髪ではでな服装の男がいた。

亡くなった女子大生は、こともあろうに7月25日の深夜にほのかさんをレイプした男のカノジョであった。

カノジョを亡くした悲しみに暮れている中で、霊安室に捜査1課の刑事8人がドカドカと足音を立てて男の元にやって来た。

「(男A)!!逮捕状だ!!」

刑事のひとりが、広げた書面を男に見せた。

「逮捕状…オレが何をしたと言うのだよ…」

突然逮捕状を見せられた男は、ひどく動揺していた。

刑事のひとりは、男に対して逮捕状発行の理由を告げた。

「オドレの逮捕容疑は、殺人罪である!!」
「殺人罪…」
「丸亀の繁華街で乱闘事件を起こして別件で逮捕たれたオドレのダチが7月25日にほのかさんをレイプして殺したことを自首したぞ!!」
「そう言うことで、今からオドレの取り調べを開始する!!」

刑事のひとりが、手錠を出して男の両腕にかけようとしていたが、男は泣きながら無実を訴えた。

「待ってくれ…オレは無実だ!!あの事件のあった日は…」
「ウソをついてもダメだ!!」
「オレはカノジョを亡くして悲しんでいるのだよ!!」
「ゼンニンヅラすんじゃねえよ!!」
「離せ!!オレは無実だ!!」
「うるせー男だな!!」
「母親と赤ちゃんを死なせておいて何やその言いぐさは!!」

(ドカッ!!)

刑事の1人が、男のこめかみをグーで殴り付けた。

「課長!!」
「おまえら、こいつをボコボコに殴りつけて殺すぞ!!」
「殺すって…」
「取り調べはどうするのですか!?」
「こいつはどうせ処分保留でシャクホウされる…だから取り調べても意味がない!!」
「やむを得ない!!」
「オラ!!立てや!!」

ほのかさんがレイプされて亡くなった事件は、共犯者の男が自首したことによってもうひとりの男が逮捕された。

もうひとりの男は、刑事たちから集団暴行を受けてボロボロに傷ついたあと、リーダーの刑事にナイフでズタズタに刺されて殺された。

その一方で、オレンジタウンにあるダンナの家では、深刻な家庭内問題が発生した。

けいさくさんの大学休学が長引いていたので、ダンナはけいさくさんに職場実習に行って採用をもらってこいと怒っていた。

けいさくさんは職場実習に行っても、リタイアばかりを繰り返していたので、ひきこもりになった。

ダンナは、ひきこもりになったけいさくさんに対して『何を甘ったれているのだ!!職場実習に行け!!』と怒鳴りつけて、部屋から引きずり出して、車に乗せて、職場実習先の事業所へ連れて行った。

しかし、けいさくさんは実習先で暴れて、事業所に被害を与えて、ヤーメタ…またひきこもりになった…

けいさくさんの気持ちのすさみは、さらにひどくなっていた。

ゆうさくさんは、徳島へ出張に行くと家に電話して以降、今も帰宅していない。

後になって、高知市で暮らしている愛人のソープ嬢のもとにいることが分かった。

ゆうさくさんは、ソープの女にのめり込んだから、永久に家に帰ることはないと想う。

ダンナは『専業主婦がいなくなった…とし子…とし子…』と女々しい声で泣いている。

加えて、病院を勝手に休んで、酒浸りになっていた。

ほのかさんがレイプ事件で亡くなってから7日後のことであった。

アタシがバイトをしている県庁前通りのファミマに、武方さんがやって来た。

アタシは、外のゴミ箱の整理をしていた。

武方さんは、アタシに対してダンナが悲しんでいるから家に帰ってほしいと言うた。

けど、アタシは断固拒否した。

「武方さん…アタシはダンナからきついDVを受けて心身ともにボロボロに傷ついているのよ…それなのに、なんでダンナの元へ帰れと言うのかしら!?ダンナはアタシがいないと言うてメソメソメソメソメソメソメソメソメソメソ…大の男がなさけないわよ!!でかいのはずうたいだけで、精神面はチャイルド以下よ!!アタシは、チャイルド以下のクソッタレ男とは離婚するわよ!!離婚をしたあとは再婚なんか一切考えないわよ!!」
「とし子さん、こっちはものすごく困っているのだよ…家に専業主婦がいないと困るのだよ。」
「はぐいたらしい男ね!!専業主婦がいないと困る理由はなんなのかしら!!」
「ごはんに困るから言ってるのだよ。」
「ごはんに困るのであれば、フードサービスを利用することを勧めなさいよ…フードサービスだったら、3食決まったメニューが届くのよ…家事に困ると言うのであれば、家事代行サービスを勧めなさいよ!!」
「(つらそうな声で)そ、それは…」
「とにかく、アタシにきついDVを加えて追いだしておいて、不都合なことが発生したら急に戻って来てくれ…ダンナは自分で生きて行く力がないチャイルド以下だから、バカなのよ!!」
「とし子さん…しゅうさくさんには、離婚歴があるのだよ…」
「DVが原因による離婚がある男は、再婚してもまた同じことを繰り返すのよ!!離婚歴があるから助けてくれだなんて、ムシがよすぎるわよ!!武方さん!!アタシはあんたのことでものすごく怒っているのよ!!」
「とし子さん…」
「ぶっちゃけ、アタシは再婚なんかしたくなかったのよ!!何でアタシに再婚をしろと言うたのよ!!何とか言いなさいよダンソンジョヒ主義者!!」
「悪かったよぉ…とし子さんの意向を聞かずに再婚の話を進めたことをあやまるよぅ…」
「それが人にあやまる態度かしら!!」
「あの時は、とし子さんの両親がどうしてもどうしてもと言うたから…」
「両親は、アタシの花嫁姿が見たいからそのように言うたのでしょ…他に楽しみはないのかしらと…」
「娘の花嫁姿が見たいのは…親の楽しみなんだよぅ~」
「あんたね!!アタシは思い切りキレているのよ!!三原の実家へ帰って静かに暮らそうと思っていたけれど、実家を棄てる(すてる)ことにしたわ!!」
「棄てる…それじゃあ、どうするつもりなんだね!!」
「水商売で働いている知人のコの家へ行くから!!」
「とし子さん、お願いですからもう一度だけしゅうさくさんとお話し合いをしてください。」
「イヤ!!断固拒否するわよ!!」
「拒否するって…」
「あのね!!そんなことよりもアタシはバイト中なのよ!!あんたがダンナと実家とグルになってアタシを押さえつけるのであれば、知人のヤクザの組長に電話するわよ!!知人の組のチンピラ数人をあんた方へ送るから覚悟しなさいよ!!」

武方さんに思い切りどなりつけたアタシは、再びゴミ箱の整理を再開した。

アタシの気持ちは、ますますかたくなになっていた。
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