【女の事件】とし子の悲劇・2~ソドムの花嫁
第60話
アタシはダンナが家を出た後、荷造りをしていた。

アタシは、着替えとメイクがぎっしり詰まっているボストンバックと財布とスマホと貴重品が入っている赤茶色のバッグを持ってダンナの家を飛び出した後、タクシーに乗って、JR高知駅へ行った。

アタシは、高知駅からJR土讃本線→徳島線→高徳本線を経由して、高松へ行った。

再び高松に逃げたアタシは、しばらくの間知人の家に転がり込んだ後、以前暮らしていた宮脇町のマンスリーマンションにて、ひとり暮らしを再開した。

高松に逃げ込んだアタシは、再び高松市内のデリヘル店に入店して、デリヘル嬢として働くことにした。

7月26日の正午頃のことであった。

ダンナが勤務している南国市のセメント製造会社の作業員の休憩室にて…

お昼ごはんを食べ終えたダンナは、清掃のおばちゃんと休憩室で会った。

二人は、こんな話をしていた。

「すみおさん、まさおさんが大学を休学をしたって本当なの?」
「ああ、本当だ。」
「まあ、もったいないわね…せっかく寝る間をおしんで必死になって受験勉強をしたのに休学だなんて、一体何があったのかしら?大学でいやなことでもあったのかしら?」
「ああ…まさおは、受験勉強の疲れが残っていた…と思います…でも、来年になったら、元気な顔で大学に行くと言うているので、心配はいりませんよ。」
「それじゃあ、休学している間はどうするのよ?」
「どうするって…」
「あのね、総務課の北川さんの息子さんのことで話があるのよ…北川さんの息子さんは大阪の大学に行ってたけど、ノイローゼで休学しているのよ…息子さんは実家に帰省したあと、部屋にこもりきりになっているのよ…北川さんの奥さまが教育熱心な人なので、息子さんの教育におカネをたっぷりかけていたのよ…それが原因で、息子さんはあまりいい子に育たなかったのよ…お受験に3度失敗した…高校受験の時に願書出さなかった…中学3年のクラスで公立高校に行けなかったのは北川さんの息子さんだけだった…中学卒業後に追加募集の私立高校を面接のみの試験で合格をしたけど、入学式の日に暴れて…次の日に部屋に閉じこもったのよ…高校卒業認定試験で高卒の資格を間に合わせて大学受験したけど…周囲の雰囲気になじめずに休学したのよ…かわいそうに…」
「どうして私に、そんな話をするのだね!?」
「すみおさん、一度でいいからまさおさんと話し合いをする時間を作った方がいいと提案しているのに…何で目くじらを立てるのかしら…」
「やかましい!!うちはうち!!よそはよそだ!!」

ダンナは清掃のおばちゃんに怒鳴りつけた後、休憩室を飛び出した。

この時から、ダンナは無関心の度合いは日増しにエスカレートしていた。

そんな中で、恐ろしい事件が発生した。

事件は、7月26日の夜9時前に発生した。

事件は、高知市菜園場町(さえんばちょう)の酒場街の路地裏で発生した。

家出して行方が分からなくなっていたふじおさんが、酒場街の露地裏でやくざの男のグループ5人と乱闘騒ぎを起こた。

ふじおさんが刃渡りの鋭いナイフで男たちを次々と刺した。

男1人が死亡、4人が大ケガを負った。

ふじおさんは、露地裏から逃げ出した後、電車通りをふらふらと歩いていた。

そこへ、通りかかった警察官に職務質問をされた。

ふじおさんは『もうダメ…生きて行くのがツライ…』と泣き出したので、警察署に保護された。

警察署に保護されたふじおさんは、4月にヒサナガさんを殺したこととヒサナガさんの奥さまと赤ちゃんを殺したことを話したので、殺人罪で逮捕された。

逮捕されたふじおさんは、ひどくやつれて生きる気力を失った。

ふじおさんがケーサツに逮捕された日を境にして、ダンナの無関係の度合いはさらに高まっていた。

ダンナの無関係が高まっていたのと同時に、家族の離散が本格的に始まった。
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