先輩、私だけに赤く染まって

「杉野さん?」


至近距離で目が合って、ようやく私はこれが現実なんだと理解した。


だとしたら尚更先輩がここにいる理由が分からないんだけど。


「えっ、と…、先輩はどうしてここに…?」


完全に油断していたタイミングでの再会に、上手く会話が出来ない。


「村田くん?が、杉野さんが体調不良で早退したから当番手伝ってくれって頼まれて来たんだけど…」


私は早退などしていない。


つまり、仕組まれたんだ。私に先輩と話をさせる為に。


あの人、だから昼休みに声をかけてきたのか。私の返事次第でこのことを企てようとして。


こんなの、どう落とし前つければいいのよ。


私の代わりに手伝いに来てくれたのに、そこに私がいたらそりゃあ驚くでしょうよ。


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