魔界レストランをバズらせます〜転生少女の立ち退き撤回奮闘記〜
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都市にあるグランドホテルの一室。会見の準備が整うまで、控室に通された。
異世界に来て、初めてスーツを着たな。まさか、こんなきっかけで着ることになるなんて思わなかった。
深呼吸をすると、ノックの音とともに扉が開く。顔を出したのはグレンダさんだ。
「大丈夫?」
「はい。いつでもいけます」
本当は怖くて仕方がなかった。
カメラの前に素顔を晒すことも、その向こうに私を敵だと思っている人が数えきれないほどいることも、その全てが苦しかった。
会見場に向かう途中、足が震えて感覚がない。
グレンダさんとともに会場に入ると一斉にフラッシュが焚かれた。血の気が引くのがわかる。
この先は戦場だ。少しでも発言を間違えれば後戻りはできない。
『ミレーナ』
頭の奥でルキの声がした。
『辛くなったら、俺を呼べ』
ルキ達は今、《レクエルド》の店内で中継を見ているはずだ。
大丈夫。安心して。絶対にやり遂げるから。
あなた達が温かい心を持った優しい魔物だって、精一杯伝えてみせる。
席に着くと不思議と緊張は消えていた。指先の感覚も戻り、脳に血が通う感覚がする。
心配なんてない。私には心強い仲間がついてるんだ。