どうしたらヤンキーになれますか!?-六花の恋ー【完・修正中】
………? そう言えばわたし、初対面で一度作之助って呼んでいるけど……。
抱きしめていた腕を離そうとすると、作之助の手がわたしの右腕を掴んで、そっと自分から遠ざけた。
淋しげな両瞳を見つめる。
「うち、いわゆる両親が不仲な家庭でな。俺が物心ついたころから親は喧嘩しかしてなかった。俺に生活費の金を置いて、だんだん家に寄り付かなくなったな。母親は二か月……父親は半年くらい見てないな」
……真剣だけど穏やかな声音で話す作之助。
一度作之助のおうちにお邪魔したことがあるけど、妙に生活感のないおうちだと思ったっけ……。
「玲哉が引っ越して何年経っても俺を気にかけてくれてるの、たぶんそれが原因かなって思う。……そんな家だから俺もいるのが嫌になって、学校以外は時間を問わず外をフラフラしてた。この図体で目立つからか絡まれることが多くて……いつの間にか不良扱いだった」
「………」
作之助が視線をさまよわせた。
「名前、を……呼ばれたの、いつぶりだったかな。水都さんとはじめに逢った時な。ずっと傍にあったのに、誰も呼ばないから俺も半ば忘れてた。……ありがとう。あの時、『俺』が存在した気がしたんだ。名前を呼ばれた、それだけなんだけど……ありがとう、水都さん」