からふる。~第25話~
と思ったその時だった。



バタンっ。



玄関の戸が閉まる音がした。


まさかもう帰って来ちゃったの?


皆さん顔面蒼白になるなか、恐る恐る玄関の方を見ると...。



「あれ?黒羽くん?」


「黒ちゃん、おそ~いっ!」


「黒羽くんも手伝ってよー。明日白鳥先輩の誕生日なんだから」



しかし、その声は本人には全く聞こえていないようだった。


何かがおかしい。


そう思った私は立ち上がり、黒羽くんの元に向かった。



「黒羽くんお帰り」


「よっ」


「夕飯は?」


「あぁ、いらない。ちなみに明日も」


「えっ?何で?桃さんとデート?」



黒羽くんは答えず、階段を登っていく。


私はその背中を追いかける。



「何だよ?」


「それはこっちのセリフだよ。理由教えて。デートならデートで別に構わないから」


「構わないなら言わなくていいだろ。さあやには関係ない。じゃ、おれ疲れてるから寝るわ」



それ以上私は追いかけることはなかった。


というより、出来なかった。


足がすくんで動けなかった。


壁を感じた。


初めて壁を作られた。


関係ない...。


今までそう言って突き放していたのは私。


それなのに、こうして逆の立場に立つとなんだか胸が苦しい。


呼吸が止まる。


まるで雑巾で絞られるみたいにぎゅうっとされて心が苦しくなり、痛くなる。


どうしてこんなに苦しいの?


どうしてこんなに痛いの?


その答えは...もう分かる。


私が、


黒羽くんを、


大切な人だと思っているからだ。


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