結婚前提で頼む~一途な御曹司の強引な求愛~
榛名先輩は顔を逸らし、立ち上がった。チョコレートのこともそうだし、もしかして今日の先輩はかなり機嫌がいいのでは?よし、頑張ってこれ以上叱られないように仕事を済ませちゃおう。

21時にはふたりでオフィスを出た。この時間に終わってよかった。
榛名先輩と並んでエレベーターを降りた。自社ビルのエントランスは無人。

こうして並んであちこち出かけることが多いので、最近は慣れてきたけど、普通に考えてこんなイケメンと歩けることはなかなかないよなぁと考える。身長も高いし、顔も良し。営業で歩いてると、道行く女性が榛名先輩を見ていることが結構あるもの。
これで優しい先輩だったら最高なんだけどなぁ。

そんなことを考えていたら、榛名先輩が立ち止まった。エントランスを出て、整えられた植え込みの前で、急にぴたっと。

「榛名先輩?」

忘れ物だろうか。
しかし、榛名先輩の表情はいつになく憮然として見える。いつも、この無表情か怒った顔しか見たことないけど、普段の何倍も『無』の顔をしている。もしかして、体調悪いとか?

「先輩?」
「行永里乃子」

いきなりフルネームで呼ばれた。はいなんでしょうと答えるより先に榛名先輩が言った。

「俺と結婚を前提に付き合ってくれ」
「へ?」
「結婚前提でたのむ」

んんんんん?
私は首をひねれるだけひねって凍りついた。

ケッコンヲ?
ゼンテイニ?

言葉が出なかった。
< 13 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop