結婚前提で頼む~一途な御曹司の強引な求愛~
そんなこともあり、私の中ではわずかな変化が起こり始めている。オフィスで以前よりは榛名先輩に萎縮しなくなったのだ。小心者の私は叱られるのが怖い。しかも榛名先輩の迫力で叱咤されると何も言えなくなり、よりミスが増えるという悪循環。
でも、最近は叱られた後、不意に先輩の優しい声が頭の中を過るのだ。ふたりきりでいるときの、穏やかな空気を思いだすのだ。

そうだった。榛名先輩は厳しいけど、プライベートでは私のこと溺愛してるんだった!ビビり倒す必要なんかない。
この先呆れられ、愛想を尽かされる可能性もあるけど、少なくとも今は根っこの部分でこの人は私の味方。
そして、実は可愛いところのある人なんだから。

そんな優越感にも似た安心から、気持ちに余裕ができたみたい。ちょっとしたミスは減った。
まあ、今日も三回くらいは怒られてるんですけどね。へへ。五回の注意が三回に減ったことは自分で自分を褒めてあげよう。

「傑さん、ごはんどこに行くんですか?」
「今日は、ここのイタリアンにしようかと思う。嫌いか?」

榛名先輩が見せてくれたスマホの液晶には神楽坂のイタリアンの高級店が映っている。
え、ここ有名なお店の支店じゃん。最初がラーメン、前回は居酒屋だった。三回目の食事がいきなり高級イタリアン?
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