結婚前提で頼む～一途な御曹司の強引な求愛～
営業部の落ちこぼれである私の指導係になってくれた榛名傑先輩。
二十七歳、営業二課所属。
上司命令だから、面倒を見てくれているだけで、彼も嫌々だったとは思う。私も申し訳ない。貴重な人材を私の育成に使ってるんだもの。

榛名先輩は本当にすごい先輩なのだ。
営業部はクライアントのメディアによって一課から五課まであり、その中でも営業とプランナーが複数人でチームを組む。新人はこのチームに配属され、仕事の流れを学んでいく。私はこの中で、チームの足を引っ張りまくってしまい外されたわけ。

榛名先輩は別な理由でチームに参加していない。彼は人が足りないチーム、進行が難航しているチームにピンチヒッターで呼ばれる。呼ばれれば期待以上の仕事をこなして、その案件を離れる。
さらに彼自身もいくつもの小口のクライアントを抱えていて、同時進行でいくつも仕事をまわしている。自身の案件が大きくなれば、社内外から人を集めチームを組んで取り掛かる姿は、二十七歳とは思えない貫禄だ。事実、彼と同じような遊撃部隊みたいな働き方をしている営業は何人かいるけれど、能力は折り紙付きで、みんな榛名先輩より年上だ。

そんなすごい先輩が、私をマンツーマンで鍛えてくれるようになりはや半年。
私は半年前と変わらず毎日叱られ、毎日凹み、毎日『この仕事むいてない』と思って暮らしている。
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