結婚前提で頼む~一途な御曹司の強引な求愛~
5.榛名先輩、行かないで



「……という感じで分業をしていって、二ヶ月以内に行永はひとり立ち、榛名は指導係卒業」

用田課長の言葉に榛名先輩が「はい」と短く返事した。私も横で、おずおずと返事する。

「はい。……でも、私ひとりで大丈夫でしょうか」
「まだ難しい案件はどの班も回してこないさ。むしろ、小さくてもいろんな仕事に参加できるから経験値が上がるし楽しいはずだよ」

用田課長はにこやかに言い、榛名先輩に視線を移す。

「榛名としても行永はもう大丈夫だろう」

榛名先輩は表情を変えずに答える。

「詰めが甘い部分がありますので、課長がご指導くだされば」
「おいおい、俺かよ」

課長が笑う。榛名先輩的には冗談で言ったつもりではなさそうだ。
課長のデスクから戻ると、すぐに榛名先輩から指示がきた。

「行永にも花星堂からメールが入っているだろう。対応しておけ」
「はい!」
「できたら、俺のチェックを待たずに返信して構わない」
「でも」
「散々やったことだ。問題ないだろう」

そう言われると私に返す言葉はない。先輩は外出準備を整えて、出て行った。これから客先なのは知っている。
メールの内容を確認する。胸がずきずき痛い。
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