結婚前提で頼む~一途な御曹司の強引な求愛~
その言葉に盛り上げようとしていたかほと花凛がぎょっとした顔をする。雅美は気にせずに続ける。

「里乃子がしたことは、恋愛の駆け引き的に全然アリだと思うの。告白されて、まだ好きかわからないけどお試しで付き合ってみようって、よくあるわよね。でも、里乃子は先輩の愛情に胡坐をかいていたみたいに見えたもの」
「ちょっと雅美……」

優しいけれど、言うことはずばっと言う雅美。かほが困惑して声をかける。
私は返す言葉がない。だって、それは私自身よくわかっていることだから。

「私たちに面白おかしく報告したり、すぐ別れるなんて軽口を叩いてたね。叱られたくないからって一緒にいたのはひどいよ。自分が榛名先輩の立場だったら嫌でしょう」
「うん、……嫌だね」

答えて私は唇を噛みしめた。泣く資格なんかない。雅美の言う通りだもの。
榛名先輩はあんなに真剣だったのに、当初の私は半分くらいゲーム感覚だった。恋愛できるかなゲーム。振られても痛くも痒くもなかったし、それを負い目に優しい先輩になるならいいやと思っていた。
それなのに、榛名先輩はどこまでも真摯に私を好いてくれた。

「恋愛ってエゴとエゴのぶつかり合いだから、別れに繋がったことにどっちが悪いはないと思う。だけど、この恋は終わり。榛名先輩に授業してもらったと思って、里乃子は先に進むべきだと思う」

私は手羽先でべちょべちょの手も顔も、おしぼりでごしごし拭った。一緒に滲んだ涙も拭った。そして、目の前の生ビールをぐっと一気に飲み干す。

「私、榛名先輩のことを好きになっちゃった。だから、自分のせいで先輩に嫌われたことが、罰だと思ってる」
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