結婚前提で頼む~一途な御曹司の強引な求愛~
悲しい。私が悪い。
だけど。

「でも、諦めきれない。先輩に好きだって言えなかった。謝れなかった。それじゃ前に進めないよ!たとえ、拒否されても言葉で伝えて終わりにしたいよ!」

同期の女子三人が私を見つめて黙った。

「あのね、ちょっとだけ訂正」

手をあげておそるおそる話に入るのは佐橋くん。女子四人に割って入るのは気が引けるというような遠慮がちな声だ。

「別れちゃったけど、榛名先輩、今でも行永のことすごく大事に想ってると思うよ」

佐橋くんが私を見つめて言う。

「俺、今日聞いちゃったもん。うちの三田村さんとの会話」

榛名先輩は確かに今日、三田村さんと話していたけど。一緒に五課に行ったときの会話を佐橋くんが聞いていた?

「三田村さんが行永のこと話題にしたんだよ。最近頑張ってるみたいじゃん、五課に呼ぼうかなって。そしたら榛名先輩言ったんだ。『俺の大事な後輩だから、これからも近くで成長を見守りたい。五課にはやらない』って」

これからも近くで。

その言葉で、私のこらえていた涙腺が崩壊した。
ぶわっと涙が盛り上がり、ぼたぼたテーブルや膝に落ちる。

「ああ、佐橋くんが泣かせた!」
「里乃子、ほら!ティッシュ、ティッシュ!」

みんなが世話を焼いてくれることが情けなくてありがたい。だけど涙が止まらない。

先輩はどこまでも優しい。
傷つけたのに、離れても思い遣ってくれている。
そんなあなただから、私は好きになったんだよ。

「佐橋くん、ひとつお願い。今すぐに。どうしても」

私は泣きじゃくりながら懇願した。

「なに?泣かせちゃったし、俺にできることするよ」
「お願い……!」



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