青春ヒロイズム


三学期が始まってすぐのある日。同じ部活の同級生から、「森ちゃんがひさしぶりに登校してきたいるらしい」というメッセージが届いた。

休み時間に慌てて教室を飛び出して、一フロア上の森ちゃんのクラスまで走って行こうとしたら、階段の途中で、荷物を持った彼女が震えながら立ちすくんでいた。

異様に震える彼女の横を、ナルと彼女の数人の友達が笑いながらゆっくり通り過ぎようとしている。


「誰ー?誰だか知らないけど、そこに突っ立ってたら邪魔なんだけど」

嘲るように笑ってそう言ったナルが、明らかにわざと森ちゃんの肩にぶつかる。

そのことに怯えた森ちゃんの手から、持っていたスクールバッグが離れて落ちた。

それが、階段を滑り降りて私の足元まで落ちてくる。

スクールバッグを落とした森ちゃんは、俯いて足先だけをじっと見ていて。

ナルたちはその姿を見て可笑しそうに笑っていた。


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