青春ヒロイズム


前の学校の先生や周りがそうだったように、てっきり星野くんにも非難されるものだと思っていたのに。彼がそうしなかったことに驚いた。


「元々、今西がその森ちゃん?って子に嫌がらせしてたから、深谷はそれを止めようとしたわけで。わざと突き落としたわけではないよな」

そう。故意で突き落としたわけじゃない。そのことを、前の学校の理解ある先生数人とお母さんはわかってくれた。


「でも、わざとじゃなかったら何をしても許されるわけじゃないでしょ?『私がナルのことを突き飛ばして、ナルが階段から落ちて怪我をした』その背景にどんな事情があったとしても、それが事実なんだよ。だから、ナルを怪我させた私が悪いことに変わりはない」

「その背景にある事情は、深谷のほうが正しかったとしても?」

星野くんが悲しそうな目をしてそう問いかけてくる。

正直、今はもう誰が正しかったのかなんてわからないけど。

私の話を聞いた星野くんがそう感じてくれたのなら、それだけで嬉しい。それで充分。そう思って、静かに頷いた。


< 197 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop