本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
「スイーツはクリスマスに働いてくれてるお礼だって、支配人の奢りらしいよ」

スイーツはマドレーヌやパウンドケーキなど、何種類かが綺麗に並んでいた。ホテル内にあるカフェのテナントのお持ち帰り用のスイーツらしい。私はマドレーヌを選んでから再び座る。

「甘くて美味しい~」

「夜に食べたら太るけど、クリスマスだからいーよね」

吉沢さんとスイーツを食べていたら、頭の上に雑誌みたいな固い本を載せられて、軽くポンポンと叩かれた。

「それ、俺が全部、各部署に配ったんだから心して食べろ」

「た、高見沢さん……!」

相変わらず、私の頭を叩く人だったりする。話し込んでいたから気配を察知出来ず、不意打ちに驚いた。

「あ、出たな!支配人の犬、高見沢!」

「……っるさい。黙れ!」

吉沢さんは高見沢さんを見つけるなり、指を指して笑う。高見沢さんが珍しく顔を赤くして、そっぽを向いた。これは、もしかしたら、もしかします………?

「篠宮さん、一条様が明日、一日のんびり出来るカフェを御所望だ。探しとけ!」

「あ、はい。分かりました…。でも、何で私?」

「一条様があんたに連れて行って欲しいそうだ。何故だかは分からない」

「接近禁止は?」

「それは俺が決めたルールだったから解除。昨日の件、軌道修正してきな」

と言って私達の元を去って行った。「一条様か……。あの方、支配人をバトラーに指名してるのは引き抜きたいからだよね?支配人は本店に居る時から首を縦には振らないみたいだけど…」

「そうなんですね…」

吉沢さんは系列ホテルからの引き抜きではなく、面接を受けて入社した口だが、私が知らなかっただけで、皆は事情を知っているのかもしれない。

プチ休憩が終わり、一条様のカフェの件について再度確認しようとして高見沢さんを探していると……一条様と一颯さんとボディガード風の男性が客室から何処かへ移動しようとしているところだった。

立ち止まり、深々とお辞儀をして通り過ぎるのを待つ。
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