本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
「支配人が母親に認められてるのは知ってるよ。息子を認めないで、一族でもないあんたに肩入れしてるから腹が立つんだよ!だからこそ、あんたには潰れて欲しかった!」

「だからって篠宮は関係ないだろう?」

「篠宮さんはね、例のリゾートホテルで見かけて本当に可愛くて一目惚れして、このホテルで再会出来たのが何かの縁だと思ったんだ。だけどね、あんたを見てる視線だとかに気付いた時に憎悪が生まれたよ。あぁ、そうだ、潰すにはこの子を利用しようってね。極めつけが篠宮さんがあんたのマンションに行く所だった事が分かった時だよ!

でもさ、ベルギー産のチョコをあげても言葉で誘導しても、篠宮さんは俺の存在価値にも気付いてはくれなくて……使えない駒だったって訳!」

上手く頭の中が整理できない。

「……そうか。言いたい事はそれだけか?」

「あんたに話す事なんてもう何もないよ」

「一条様も一人息子がこんなに馬鹿じゃなかったら苦労もしなかったのにな。修行の為とは言え、一条様のホテルグループにも入れてもらえず、就職も決まらず……、それでも一条グループの御曹司か?」

「御曹司なんかじゃないぞ、そもそも父親に引き取られてるんだからな!」

「父親に引き取られていたとしても、ホテル業界に骨を埋めようとしたのは自分自身だろ?離縁しようと一条様はお前を後継者としても考えているのだから、一からやり直せ!」

一颯さんは淡々と話し、幸田様は目線を外して聞いていた。

「自分だけが可哀想だなんて思ってないで、次のステップに進めるように考え直せ。明日までゆっくり静養してから帰るんだぞ。話は以上だ、行くぞ、篠宮」

「え、あ、はいっ」

私は一颯さんに手を引っ張られ、客室を出た。出た瞬間に「何も喋らないで着いてこい」と小声で言われたので静かにうなづいた。
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