本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
「副支配人にバレたとしても易々と言いふらすような人じゃないし、それを理由に勝ち上がる人でもないが…万が一、違う方面からバレる可能性もある。真っ先に恵里奈を選びたいが俺が仕事を辞めたとしたら、恵里奈を養えない。だから、恵里奈が本当に結婚しても良いって思える日まで待ってるよ。その日まで最善策を考えよう」

「はい。私も副支配人は信用してますし、一颯さんにも仕事を辞めて欲しくないです。築きあげた地位を私の為に簡単に捨てるなら、その時は私は身を引きますから。だから、お仕事は辞めないで下さいね!私ももう少しだけ一颯さんとも皆ともお仕事したいし……!」

私は一颯さんを見つけながら、気持ちを精一杯にぶつける。そんな私を見て、失礼極まりない位に一颯さんが笑っている。

「…っはは、俺も簡単に恵里奈が仕事辞めるって言ったらどうしようかと思ってた。そうだな、俺も両方、手に入れたいのが本音。恵里奈も地位も名誉も。支配人として、理想のホテルを築きあげたいから」

私が知らない年月に一颯さんの努力が形として実ったのが、総支配人としての立場だ。私如きで失って欲しくない。そして、私如きで手放すのは野心家の一颯さんらしくない。

「だから、その時を楽しみに待つよ。近い内に恵里奈の御両親に結婚前提のお付き合いをしていると挨拶に行くから。……恵里奈、顔が真っ赤!」

「だ、だって、一颯さんの奥さんになるって想像したら恥ずかしい」

「何で?」

「一颯さんちに挨拶に伺ったり、私もお姉さんの妹になったり、うちの両親や友達にも一颯さんをお披露目したり、ウェディングドレス着たり、そして双子ちゃんが産まれるんですよね……!私がママになるって……!」

「一瞬でそこまで想像したの?恵里奈はたまに自分の世界に入り込む時があるよね」
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