本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
「手伝うよ」

使い終わり、テーブルから剥がされたクロスをいくつかにまとめて、ランドリーに運ぶ為に台車に乗せて出発しようとした時、大学生に捕まってしまった。

「中里さんと一緒に行くので大丈夫です」

「こっちの女の子は中里さんって言うんだね。じゃあ、三人で行こうよ?」

「他にも片付けが残っていて効率が悪いので二人で行きますから大丈夫です」

しつこく話をかけてくるので、振り切ろうとして台車を勢い良く横にカーブさせると倒れて乗せていたクロスが落ちた。

ガダンッ。

鈍い音がして倒れた台車を慌てて引き起こす。

散らばったクロスを拾おうとした目線の先には、誰かの足元が見えた。紺色にグレーの細いストライプの入った細身のスーツには見覚えがある、支配人だ。

「またお前か、篠宮」

低い声の聞き慣れた叱責。しゃがんでいる私を見下ろす、威圧的な態度。

「私語は慎めと何度言ったら分かるんだ?」

「すみません…」

いつもなら、ただの叱責だと思うけれども…このタイミングで来てくれたのだから、きっと助け舟なんだと思う。

私はクロスをササッと拾い上げ、台車ので籠の中に放り投げる。

「申し訳ありませんでした。一人で行って来ます」

…そう言い残して、私はその場を去った。会場を出て従業員専用エレベーターに乗り、ランドリーまでの道のりを急ぐ。
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