本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
高見沢さんは一颯さんと話している時と接客している時以外は、ムスッとしていて感じ悪いけれど…一颯さんの前では可愛らしく笑うんだな。高見沢さんから感じるこの感情表現が信頼なのか、愛情なのかは不明だけれども……。

「そろそろ行くよ、篠宮さん。今日はお忍びで来る方だから、粗相のないようにしなきゃ」

「は、はい!頑張ります!」

「気合いだけじゃ駄目なんだよね……」

高見沢さんはボソリと呟いて、舌打ちをした。一颯さんも一緒に従業員食堂を出て、別れ際にお互いに目線を合わせて微笑んだ。

会える時間が減っても、一颯さんからの愛情は変わらず、連絡はこまめにくれるし、顔も見に来てくれる。それだけで仕事も頑張る事が出来るし、幸せを感じられる。

エグゼクティブフロアの専用フロントに立ち寄り、本日のバトラー付きのロイヤルスイートルームへの予約状況を確認する。

「……お忍びで来るのは芸能人だね。女の子希望だって言うから、顧客名簿調べたら、あの俳優じゃん」

お忍びで来る方の顧客名簿は外部に漏れないように配慮されている為、当日にしか見れない事になっている。事前に年齢、性別や食事の希望などはチェック出来るが、名前等は極秘なのだ。私達は顧客名簿を見せてもらい、作戦を立てる。

「知ってる?あのタラシで有名な俳優だよ」

「あの方、記事の通りにそんなに取っかえ引っ変えしてるんでしょうか?」

「何人もホテルで激写されてるんだから、そうなんじゃない?」

この方に限っては当日になっても名前は極秘になっており、イニシャルがI·Hとしか公表されていない。その情報から推測する。予約人数は二人。彼女だろうか?
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