慈愛のケモノ

外堀から埋めるみたいな、私の方から近づいていくという男性だって中にはいた。
遠月さんがそれから漏れない理由はひとつもない。

真希にそれを伝えることはないけれど。

「まあ良いじゃない、真希だって水本さんに会えるし」
「それは嬉しいけど。琉花はさ……もっとさ……自信持ったら良いのに」
「自信」
「そうだよ。仕事も出来るし自立してるしあたしに意地悪しないし」
「この年齢で仕事出来なかったら大変だし、真希に優しい人はもっといるじゃない」

何も全部、私だけじゃない。

それが自分の中でイマイチ自信に繋がることがない。

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