強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「あ……」

鏡に映る首筋に赤い小さなバラのような跡を見つけ、それを手で隠す。

「なんなのよ、もう……」
 
八雲さんのペースに翻弄されっぱなし。彼の言動は本気じゃない、からかわれているだけとわかっているのに、いつも動揺丸見えの反応しかできなくて……。

「ホント、嫌になっちゃうよ」
 
ぽそっと呟いた言葉は、バスルームのシャワーの音にかき消される。
 
今日はもう、精神的にも肉体的にも疲れてはてた。

これからどうなってしまうのか──。

不安は尽きないけれど、今日はもう何も考えたくない。

シャワーを頭から全身に浴び、今日一日の疲れを洗い流した。




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