強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
今日のことは全部忘れてしまいたいと、呷るように飲み続けた。
「芳奈ちゃん、まだ飲むのかい? これで最後にしたほうが……」
「いいの。恒さん、今日は放っておいて」
恒さんの言葉を遮り、グラスを奪い取る。でも酔っているせいか、その手が滑ってしまい、あっ!と思う間もなくグラスが傾き始めた。
せっかく恒さんが作ってくれたカクテルが……。
慌てて手を伸ばすが、ふいに視線が遮断されカクテルグラスが見えなくなってしまった。
「おっと、危ない!」
突然頭上から声が聞こえて、誰?と顔を上げる。そこには私のカクテルグラスを持った男性が立っていて、ニヤリとイジワルな顔で微笑んでいた。
「な、何? あなた、誰?」
カクテルがこぼれずに済んだのはこの男性のおかげだ。そうわかっているのに、無神経な笑顔を向けられて、おもわずぶっきらぼうな声が出る。
「ねえ君さ。人に名前を聞くときは、まず自分から名乗るのが礼儀じゃない?」
そう言いながらストンと私の隣に腰を下ろし、またもや不躾な視線を送ってきた。