強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「今日部長から、この企画が通りそうだと聞きました。先方にアポが取れ次第名古屋に出向こうと思っているんですが、どうしてそこへ八雲さんも一緒に行くんですか?」
 
八雲さんにグイッと近づき、企画書を持って詰め寄る。

「どうしてって、俺が行きたいから」

「俺が行きたいからって、これは旅行じゃないんです。八雲さんは自分の仕事をしてください」
 
なにか理由があると思っていてたけど、まさかそんな理由だったなんて……。
 
副社長の言葉とは思えない発言に、少しガッカリする。

「何? そんなガッカリした顔して、ホントは俺と一緒に行きたいんでしょ?」
 
今度は逆に八雲さんに詰め寄られ、違うと顔を横に振った。

「全く、芳奈は正直じゃないね。仕方ない、本当のことを言うと、あの店のオーナーとは知り合いでね。以前にも世話になってるから、お礼方々会いに行きたいと思ったんだけど、一緒に行ったらダメ?」
 
からかうようなことを言ったかと思えば、甘えるような素振りをして私の目を覗き込む。綺麗な瞳が悲しげに揺れて、胸がぎゅっと痛くなった。


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