強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
そんな顔するなんてズルい。ダメなんて言えなくなるじゃない……。
 
囚われていた目を、ほんの少し逸らす。小さく息をこぼすと、仕方ないというように口を開いた。

「ダメじゃないですけど、仕事の邪魔だけはしないでくださいね」

「わかってるって。俺を誰だと思ってるの? あ、それと。ホテルはこっちで手配するから、行く日が決まったら連絡して」

「わかりました」

「あのオーナー、ちょっと偏屈なところがある人だから、コラボの説得には時間かかりそうだな。少なくても、二泊三日は覚悟しておいたほうがいい」
 
二泊三日──。

どうしても決めたい企画だから、今回の出張で絶対に口説き落としたいと思っているけれど。

偏屈な人なんて言われると、胸の奥に隠している不安が顔を出しそうになる。俯きため息をついた私の頭に、八雲さんが手を乗せた。

「行く前からそんな心配そうな顔をしてたら、勝てるもんも勝てない。自分の企画に、もっと自信を持て!」
 
八雲さんからの叱咤激励に、背筋をピンと伸ばす。


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