強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「ごめん。まさか、乗ってすぐに熟睡とか……悪かった」
 
新幹線の中での記憶が全くないと、申し訳無さそうに頭を掻く八雲さんを見て笑いがこみ上げる。

「もういいですよ、そんなに謝らなくても。おかげでゆっくり、交渉のシミュレーションができたので」
 
新幹線から降り、スーツケースを引こうとした手を取られる。

「俺が持つ」

「え! でも……」
 
自分のバッグを右肩に掛け私のスーツケースを持つと、左手で私の右手を握る。

「行くぞ」

「は、はいっ」
 
突然のことに驚いて、八雲さんの手をギュッと握り返してしまう。久しぶりに触れた彼の手は相変わらず大きくて、胸はドキドキしているのに気持ちは妙に落ち着くのは何故なんだろう。
 
私の手を引く、八雲さんの手に目を動かす。半袖のシャツから伸びる腕は、細いのに筋肉質でたくましい腕で。そこから身体の線をなぞるようにゆっくり目線を上げていくと、見目麗しい横顔に到達した。


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