強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
でも誰ひとり嫌な顔ひとつせず待っているのを見ていると、それだけで一年半ぶりのチョコレートとの再会に期待が高まる。

「八雲さん、どうしますか。アポの時間は三時なんですけど、早く着いたら店員さんに声をかけてと言われてまして」

「そうだな。外も暑いし、その言葉に甘えて中に入らせてもらうか」

八雲さんの言葉に賛成とうなずき、店に入ってすぐのところにいた店員さんに声を掛ける。煌月さんから通達があったのか、すぐに店の奥に案内された。

南欧風の建物の店内も外観と同じように可愛らしく、所々に飾られた花がその印象をより良くしている。
 
六畳ほどの部屋でソファに座って待っていると、しばらくしてノック音を聞こえドアが開く。煌月さんが顔をのぞかせ、慌てて立ち上がった。

「よう八雲。ひさしぶり、元気だったか?」
 
部屋の中に入ってきた煌月さんはまっすぐ八雲さんに向かい、ふたりは握手を交わす。

「轟(ごう)こそ、忙しそうだけど元気でやってるか?」
 
目の前で繰り広げられている再会劇に、ひとり置いてきぼりの私は呆然と立ち尽くす。


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