強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「君が今回連絡をくれた、梅岡さん?」
 
突然声をかけられハッと我に返るとバッグから名刺入れを取り出し、一枚煌月さんに手渡した。

「はじめまして。クリキホールディングス第一商品企画部の、梅岡芳奈と申します。この度はお忙しい中時間を作っていただき、誠にありがとうございます」
 
少し早口に挨拶をし、煌月さんに頭を下げる。人の第一印象は挨拶で決まる、と言っても過言ではない。

印象良く誠実に、笑顔で明るく──。

その四つに心がけて挨拶したつもりだったのに、何故か笑われているような……。

不思議に思い顔を上げれば、八雲さんと煌月さんが顔を見合わせて笑っていて。わけのわからない私は、心外だと言わんばかりに頬を膨らませる。それに気づいた八雲さんが、私に一歩近づいた。

「笑っていたのは別に、バカにしてじゃない。今どきの若い女性にしては、律儀で真面目だなと思って」
 
そうだとしても頭を下げているときに笑われるのは、あまり気分のいいものじゃない。でもここで目くじら立てても仕方ないし、煌月さんもいることだしここは穏便にと呼吸を整える。


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