強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
だってそうでしょ。今回の名古屋出張に一緒に行くといい出したのは八雲さんで、私の希望ではない。煌月さんが八雲さんの知りあいだとは知っていたけれど、親友だったとは知らなかった。だから今回の交渉は大丈夫なんて、そんなこと思うはず……。
なかった──本当に、そう言える?
どこかで、心のずっと奥の方で、八雲さんがいれば大丈夫、なんとかなるって思ってなかった? もしかしたらその勝手な思いが、断られたときに頭の中が真っ白になった原因だったとしたら……。
八雲さんの言う通り、私は高をくくっていたのかもしれない。
悔しい──。
身体の内側から湧き上がる、屈辱にも似た思いに唇を噛む。後悔ばかりが押し寄せてきて、今にも泣いてしまいそうだ。
それをなんとか堪えていると、窓の外に名古屋駅のツインタワーが見えてくる。タクシーが減速し、今日泊まるホテルの前に停車した。ドアが開き、八雲さんを待たずに外へ出る。
「芳奈?」
支払いをしていた八雲さんが、ドアから外を覗く。一瞬目が合い、逃げるように目を逸らした。
「少し、頭を冷やしてきます」
八雲さんに背中を見せたまま、取るものも取り敢えずその場から走り出す。
「おいっ、芳奈!」
私の名前を呼ぶ八雲さんの声に振り向くこともせず、大勢の人で賑わう街の中へと入っていった。
なかった──本当に、そう言える?
どこかで、心のずっと奥の方で、八雲さんがいれば大丈夫、なんとかなるって思ってなかった? もしかしたらその勝手な思いが、断られたときに頭の中が真っ白になった原因だったとしたら……。
八雲さんの言う通り、私は高をくくっていたのかもしれない。
悔しい──。
身体の内側から湧き上がる、屈辱にも似た思いに唇を噛む。後悔ばかりが押し寄せてきて、今にも泣いてしまいそうだ。
それをなんとか堪えていると、窓の外に名古屋駅のツインタワーが見えてくる。タクシーが減速し、今日泊まるホテルの前に停車した。ドアが開き、八雲さんを待たずに外へ出る。
「芳奈?」
支払いをしていた八雲さんが、ドアから外を覗く。一瞬目が合い、逃げるように目を逸らした。
「少し、頭を冷やしてきます」
八雲さんに背中を見せたまま、取るものも取り敢えずその場から走り出す。
「おいっ、芳奈!」
私の名前を呼ぶ八雲さんの声に振り向くこともせず、大勢の人で賑わう街の中へと入っていった。