強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
木陰のベンチに腰を下ろし、公園内に目を向ける。
 
今日は日曜日。大きな広場では家族連れやカップルが思い思いに遊んでいて、幸せそうな雰囲気に見ているだけで心が癒やされる。
 
本当なら私たちも、あのカップルみたいに幸せな時間を過ごしていたのかもそれないのに……。

複雑な感情が入り乱れ、ふと目を逸らした。

「芳奈、ごめん」

「それは何に対しての謝罪ですか?」

少し意地悪な態度だなと自分で思いつつも、そうせずにはいられない。謝って済めば、警察はいらない──と、よく父親が言っていた。

「痛いところを突くねぇ」
 
そう言って八雲さんは力なく笑い、私を見つめる。

「まずは会社内で広まっている噂についてだけど……」
 
言葉尻が弱々しくて、胸の中に不安が広がる。鬼が出るか蛇が出るか──拳をギュッと握りしめた。

「四星百貨店との業務提携をうまく進めるために、芳奈に近づいたわけじゃない。B&Rで芳奈にあったのも偶然だ。でもあのとき芳奈が四星の令嬢だと知って、利用価値があると思ったのは本当だ。すまない」
 
頭を下げる彼を見て、言葉を失う。


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