強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
なんで八雲さんが、そんなに怒るの? 惨めで怒りたいのは私の方なのに……。

「すみませんでした。もう、ここで降ります」
 
膝の上に載せていたバッグを、胸の前でぎゅっと抱きしめる。何か言われる前に車を降りようとして、「カチャッ」とドアをロックされた。

「なんで……」
 
振り返り、彼の顔を見つめる。

「話はまだ終わってない。勝手に帰るつもり?」
 
八雲さんはそう言うけれど、私にはもう何も話すことはない。あるとすれば……。

「恋人のフリの件も、もういいです。父には本当のことを話します。ご迷惑をおかけして、すみませんでした」

「じゃあ芳奈は、ルナ・カルドの御曹司と結婚することになってもいいの?」

そんなこと、いいわけない。私だって好きな人と恋をして結婚したい。でも……。

「私が誰と結婚しようと、八雲さんには関係ないです」

こんな嫌味な言い方しかできない自分が情けない。でも最初から、こう言えばよかったんだ。そうしたら、誰も巻き込まずに済んだのに……。











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