強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
突然羞恥に襲われて、触れる頬がやたら熱い。どう反応していいのかわからなくて、身体を固く縮ませた。
 
今日は訓練だから言っているんだろうけど、本来そういう言葉は好きな人に言うもの。私になんて使ったらもったいない……って、あれ?
 
そう言えば私、一度も聞いたことがないけれど。八雲さんって恋人がいたりするんじゃないの? 

だって三十三歳だよ? 結婚適齢期、しかも大手菓子メーカーの副社長、背が高くてイケメンで性格は……好みの問題だけど、こういうタイプが好きって物好きもいる、だろう。

そんな条件のいい男性に、恋人のひとりやふたりいたっておかしくない。というか、いなきゃおかしい。百歩譲って恋人がいないとしても、好きな人くらいはいるんじゃないだろうか。

あぁ、なんでそんなこと真っ先に気づかなかったんだろう。自分のことばかり考えていて、肝心なことを見逃していた。

前にも思ったことだけれど、一晩過ごした責任を八雲さんが取る必要はない。

私が飲みすぎて記憶をなくしたことが原因なんだし、もし好きな人がいるのならこんな小芝居に付き合わせてしまうのはやっぱりよくない。


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