強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
八雲さんがトイレから戻ってきたあとは私の洋服を見たり、八雲さんのメガネを見たりと傍から見たら恋人同士に見えただろう時間を過ごした。
小腹の足しにと買った鯛焼きを抱え、手を繋ぎふたり横に並んで駐車場へと戻る。
「それにしても、八雲さんがメガネをかけるなんて知りませんでした」
自分が勤める会社の副社長の顔も知らなかったくらいだから、当たり前のことなんだけど。八雲さんとメガネが結びつかず、彼の横顔をじっと見つめた。
「普段はコンタクトだからな。でも家で仕事をするときなんかは、ほとんどが眼鏡を使ってる。何、メガネをかけた俺も見たいとか?」
突然八雲さんのしたり顔が近づいて、思わず彼の胸に手を当て押しのける。訓練だと言っても、八雲さんのスキンシップは何もかも距離が近すぎる。
でも……。
八雲さんのメガネをかけた姿は見てみたいかも。
普段見せない姿は貴重だし、イケメン×メガネはそれだけで価値がある。でも言っておくがそれは単なる好奇心で、それ以上でもそれ以下でもない。