偽りのキス

乙の涙に驚いた



「乙…なんで…」


また…

泣かせた…



やっぱり
触れなければよかった



「ごめん…乙…ヤダった?」



なんで
まっすぐ進めなかったんだろう



ボロボロ涙を流しながら
乙が言った



「…嫌、じゃないよ…

でも…顔なんか、見ないでよ…

ホントは、あの人がいいのに…

私じゃなくても、いいのに…」



あの人…


綾ちゃん




乙はいつも
綾ちゃんの代わりになってくれてた



今日もきっと
そのつもりでオレとキスしてくれた



オレを受け入れてくれた




乙のこと
好きになる資格なんてないよね



今更




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