たとえばあなたのその目やその手とか~不釣り合すぎる恋の行方~
私、藤 都(ふじ みやこ)、27歳。

どこかの演歌歌手みたいな名前は、今は亡き演歌好きの祖父がつけた。

名前に似合わず古風とは無縁で、じっとしていられない性格。

身長は156センチとごく平均的だけど、どちらかといえば細身で出るところは出ていないせいで女性らしいスタイルとはお世辞にも言えない。ショーウインドウに映る自分の姿を見ては、無味乾燥な一本の枝みたいだといつもため息が漏れた。

唯一特徴的な二重の大きな目も僅かに端が上がっているせいで、勝ち気なネコみたいだとよく友達にからかわれる。

完全に名前の印象とはかけ離れているそんな私は、大学の頃、自分の先行きが見えなくなり、一年間日本から飛び出し放浪の旅に出た。

その中でも居心地がよく長く滞在したフィンランドで目の当たりにしたのは、生き生きと働く女性たちの顔、顔、顔!

それまでバイト先で、大して仕事もできない禿げ上がった主任から不甲斐ない扱いを受けている女の先輩を見ていた私には、こんなにも女性がキラキラ輝ける世界があるんだって衝撃だった。

男性と肩を並べて堂々と仕事をしている彼女たちは本当にかっこよくて美しくて。

先輩みたいに偉そうにされて小さくなってる女性は一人もいない。

その時、はたと自分に課せられた使命のようなものを感じた。

例え日本であろうと、彼女たちのように自分の持つ能力を存分に発揮できる場所で生き生きと働かなくちゃいけないって。

自分も然り、日本でがんばって働く全ての女性が報われるために自分ができることはなんだろうかと考えた。

帰国後、肩まであった髪をばっさりベリーショートに切り、人生初めてなくらい必死に勉強した結果……。

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