俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 すると、貴士さんは地元で採れた野菜が並ぶ棚をじっと見ていた。

「貴士さん?」
「これ、綾花の字か?」

 彼の視線の先には、木の札に毛筆で書かれた野菜の名前。
 この役場の職員さんに頼まれて、私が書いたものだ。

「すごい、よくわかりましたね」
「わかるよ」

 驚く私に、貴士さんは当然だという表情でうなずく。

「綾花の字が好きだから」

 甘い視線を向けられて、鼓動が速くなった。

 落ち着け、落ち着け。
 貴士さんはあくまで私の字が好きだと言っただけで、私を好きなわけじゃない。

 相変わらず人たらしな貴士さんを睨みながら、深呼吸を繰り返す。

「これは、依頼されて書いたのか?」
「そうです。ときどきお願いされるんです。お礼はお菓子とかお野菜ですけど」
「将来有望な若手書家に野菜の札を書かせるなんて、随分贅沢だな」
「そんなこと……」
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