俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 ドア越しに聞いたから彼の表情はわからなかったけれど、声だけでも十分、貴士さんが姉を深く愛しているのが伝わってきた。

 それなのに……。

 貴士さんの気持ちを考えると、胸が引き裂かれるように痛む。

 彼が私に対して見せる独占欲も嫉妬も、すべて姉に裏切られた心の傷が根本にあるんだと知っているから、なおさら切なくてどうしていいのかわからなくなる。

『そういえば、貴士と一緒に暮らしてるんだってね』
「知ってるの?」
『うん。一昨日東京で貴士に会ったし』
「え……」
『貴士が綾花の家に押しかけたって聞いて、詳しく事情を説明しなさいってメッセージを送って呼び出したのよ』

 貴士さんは仕事で東京に戻っていたけど、姉に会ったんだ……。

 心の奥がしんと冷えた。
 受話器を持つ手が震える。

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