俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 そんなことを考えてしまう自分に驚いた。

 貴士さんは有能で穏やかで頼りがいがあって、その上思わず息を飲むほどの精悍な美貌の持ち主。
 姉が今は貴士さんに好意を持っていないとはいえ、そんな素敵な人と結婚したら幸せになれるに違いない。

 それなのに私が貴士さんと結婚したいと望むのは、姉の幸せを横取りしようとするのと一緒だ。

『かわいい綾花が政略結婚させられるくらいなら、私がしたほうがマシだしね』

 姉はそう言って、安心させるように私の髪をくしゃくしゃとかき混ぜる。
 その少し乱暴な指先から、私への愛情が伝わってきて胸が詰まった。

 私のことを考えてくれている姉に対し、自分の身勝手さに気付く。
 嫌悪感と罪悪感が同時に込み上げる。

 急に寒気を感じて手で口を押えた。

『綾花、どうしたの?』
『なんでもない』

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