都合のいい話
初めて、君から質問を受けたわけだが、
君の問いに答える前に一つ前置きをしておこう。
君が私に答えを聞きたがっているのは決して喜ばしい事ではない。
何も成し遂げてもいない私にまで聞かなくてはならないほど君が正常な判断ができていないといえる。
この問題に関しては君のまわりの、
崇高な人々にもう一度問うてみることをおすすめする。

さて、君の問いは「人生とは何か」だったね。
もう一度言っておくが私は君の思うような崇高な人間ではない。
恐ろしく平均に近いような人間だ。
この人の言うことをそう、うかうかと信じてはならない。

「人生とは何か」についてだが、
この問いは永く議論を続けているものでまだ答えが出ていない。
そして、この問題について誰かに尋ねる時、殆どは"自分にとって都合のいい"答えがほしいのだろうと思う。
勿論、君も例外ではなく。
これから答える事が、君にとって都合のいいものになるかどうかは分からないが、
それでも私は答えよう。

人生とは何か、それは「人生」である。
別の言い方をすれば人生とは何かを考える事が人生であって、それ以下でも、それ以上でもない。
先に私が、うかうか信じてはならないと言ったのも、そのせいである。
答えのない問いを、赤の他人に聞くのは聞かれたほうも骨が折れる。

しかし、この答えで君が満足するわけでも無かろうから、
今の私の考える「人生とは何か」を書いておこうと思う。
今の私の考える人生とは、
性を楽しみ、愛を育み、そして生を喜ぶ
ことだと思っている。
より人間的に生きるのが人生なのではないか。と。
しかし、これも今の私の考えであってこれが答えと言うわけではない。
私もこれからこの問いについて考え続ける。
どうか、君も考えることをやめないでほしい。

最後に、このような問いはしばしば鬱陶しがられるだろうが、様々な大人に聞いてみるといい。
それは、答えが無いことが顕になり君を惑わせるかもしれないが、君にはそれを楽しめる素質がある。
私にこの考えを述べる機会を与えてくれたことに、感謝する。
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