(短編)初恋オムライス
彼と一緒に帰ったことは一度もなかったから、初めてお店の外で二人きりになるって思ったら一瞬、胸が高鳴った。


「え、ほんとに?あ、ありがとう」


あたりはもう真っ暗で人通りも少なかった。夜風は冷たかったけど、彼の隣を歩くだけで身体があったかくなるのを感じた。


駅まで15分、2人きりか。


恥ずかしい、でも嬉しいな。


駅までの帰り道、きっと彼と一緒なら会話がはずむだろうなって思ったから。だけどその期待とは裏腹に、横に並んで歩く彼はさっきからしばらく黙ったままだ。


あっくん、どうしたのかな?疲れてるのかな。


いつも彼から話しかけてきてくれるし、今日は私が何か気の利いた話題を。


そう思って必死で頭を巡らせた。


「あ、あの。あっくんの学校の制服かっこいいね。ネクタイ似合うよね。チェックのパンツも似合ってるし」
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