後輩くんはワンコ時々オオカミ


「・・・・・・涼太?」


「はい?」


「あの・・・ね?」


扉の隙間から声をかける不審な私に
立ち上がった涼太が近づこうとして


「涼太、来ちゃダメっ」


「へ?」


「着替え、忘れたの
向こう向いててくれる?」


「あ、あ、はいっ、こっちで良いですか?
俺っ、隠れてますっ」


慌てた涼太はベランダに向かうと
カーテンの向こう側へと消えた


その隙に急いでリビングを通ると寝室へ飛び込んだ


「・・・ハァ」


ウッカリな自分を反省しながら
サッと着替えてリビングへと戻る

涼太はカーテンの向こう側のままで


「涼太?」


「あ、もう大丈夫ですか?」


「うん、ごめんね」


「全然です」


ニコニコ笑った涼太の髪が濡れていて
ドライヤーを取りに脱衣所まで戻った

洗面台の鏡に映る自分は
頭にタオルを巻き付けたままで


「私は後で良いか」


ドライヤーを手にリビングに戻ると
ソファに座った涼太は頭だけ振り返った


「乾かしてあげる」


「え?」


「涼太の髪、ふわふわだから
一度やってみたかったのよね〜」


ソファに後ろに立つと
ドライヤーのスイッチを入れた


髪の水分が飛ぶたびに
ペチャンコだった髪がフワリと立ち上がる


柔らかな癖っ毛が羨ましくて
手櫛で後方へ流しながら触っていると


なんだか、また胸が騒ついた


・・・んん・・・ん


これはなんだろう


考えようとするより先に
短い髪は乾いてしまった


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