後輩くんはワンコ時々オオカミ
ワンコと散歩



「眞子先輩」


「ん?」


「手、退けてください」


「やだ」


彼氏居ない歴が年齢と同じの私には
涼太にどう返せば良いのかすらも想像つかない


「じゃあ俺が退けても良いですか?」


「それもやだ」


これじゃあどっちが歳上か分からないじゃないか

駄々を捏ねる私を宥めるように
背中に回された涼太の手はトントンと動いていて

何故だか不思議と安心する


それに

涼太から匂うシトラスの香りが心地いいとさえ思ってしまって


頑なに外せなかった手が
少しずつ隙間を開けた


「眞子先輩?」


「ん?」


「俺が、こうしてるのは
ダメじゃないですか?」


「・・・・・・うん」


「良かった」


「・・・」


「俺は眞子先輩のことが好きだから
こうやって抱きしめたい
でも、眞子先輩が嫌がることはしたくないです
だから、嫌な時は言ってくださいね」


「・・・・・・うん」


「良かった
じゃあ、出掛けましょうか?」


「どこに?」


「裏の城山公園でも行きますか?」


「いいよ」


「じゃあ、離れますね」


「うん」


涼太が離れた時には
消える温もりに、少し切ない気持ちが生まれた


でも・・・
それを口にしてはいけない気がした


「はい」


腕の中から出たけれど
差し出された手は“繋ぐ”気満々のようで

釣られるように出した手は
涼太の大きな手に絡め取られた


「恋人繋ぎ、やってみたかったんです」


そう言って笑う涼太を見ていると
それも良いかって思える自分がいた








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