後輩くんはワンコ時々オオカミ


「眞子先輩!お昼行きましょう」


チャイムが鳴って間も無く顔を見せた涼太は

ダッシュで来たのかオデコが全開になっている


「知夏も行こうよ」


気恥ずかしさに知夏を巻き込もうとしたのに


「私も彼氏と噴水ベンチ」


お弁当を持って小さく手を振られた


それを見ながら立ち上がると


「行くのか?」


後ろの席から飯田の声がした


「うん」


涼太が絡むとムキになる飯田の意図も分からないけれど

先週みたいに呼びに来られても困るから


「行ってきま〜す」


少し振り返って軽く声をかけ
涼太の待つ教室の入り口へ向かう


「チッ」


途中、大きな舌打ちが聞こえた


・・・ん?

立ち止まって振り返ろうとした私を
阻止するように入ってきた涼太は


「眞子先輩、早く」


そう言ってお弁当の袋を取った

背後も気になるけれど
“早く”と急かす涼太に手を引かれて

確認することは叶わなかった







実は私が見ていないところで

飯田が涼太を睨んでいたなんて


全く知らなかった









「眞子先輩、お弁当も手作りですよね?」


「あ、うん、そうだけど」


「凄いな〜、俺だったら
購買のパンか学食に逃げそうです」


「あ〜、でもそんな日もあるよ?
完璧じゃないし、面倒な日もあるし
他で食べないとレパートリーも増えないからね?」


「やっぱ眞子先輩って凄いです」


ベンチに並んで座る涼太は
キラキラした笑顔を見せてくれて

やっぱり頭を撫でたい衝動が抑えられない


スッと手を伸ばしてフワフワの癖っ毛に触れれば


目を細めて笑う可愛いワンコ


「あ、それ美味しそう」


「ん?どれ?」


「エノキをベーコンで巻いたの」


「食べる?」


「良いんですか?やった〜」


ブンブンと振る尻尾が見えるようで
私も自然と笑顔になった





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