後輩くんはワンコ時々オオカミ


「古崎君っ」


お弁当を食べ終わって
涼太とお喋りをしていると
可愛らしい女の子が目の前に立った


「・・・どうしたの?秋山さん」


「先生が体育祭委員に伝えたいことがあるからって」


「ん?今?」


「・・・うん」


「そっか」


二人の話を聞いてると急を要するみたいで
口を挟んでしまった


「涼太、急ぎみたいだから
行った方がいいよ」


「え、でも・・・」


「お弁当も食べ終わったし
こうして探しに来てくれたんだもん
急ぎだと思うよ?」


「眞子先輩がそう言うなら」


渋々立ち上がった涼太は
何度も「ごめんなさい」を繰り返して秋山さんと一緒に帰って行った


「さて、帰りますか」


お弁当の入った袋を持つと
校舎へと足を向けた

少し間を開けて立ち上がったのに
視界の先にはまだ涼太と秋山さんの姿が見えて

なんだか足が重くなる


涼太を見上げて笑う秋山さんの横顔と
それを見下ろす涼太の横顔に

胸が騒ついて仕方ない


その気持ちがなんなのか
気付かないまま教室に戻ると


「お帰り〜」


一足先に戻っていた知夏が迎えてくれた


「なによ、浮かない顔しちゃって」


「ん?」


「涼太と喧嘩した?」


「ううん、してないよ」


「じゃあなによ暗い顔してっ」


「暗い顔してんの?私」


「うん、悲壮感漂ってる」


「そんなに?」


「ブッ、そんな酷くはないけど
涼太に会ったにしては暗い顔してる」


そう言って知夏は吹き出した




< 44 / 79 >

この作品をシェア

pagetop