後輩くんはワンコ時々オオカミ
ワンコの誘い



「眞子先輩」


また教室の入り口からひょっこり顔を出した涼太


「ほら、お迎え」


一番前の席の知夏は半分振り返って
身体を避けてくれた


「うん」

普通に返事をしたつもりだけど
また頬がおかしなことになっていないかと不安になる

でも・・・
涼太の顔が見えた瞬間トクンと跳ねた胸は

散々悩んだ答えに繋がっている

覚悟を決めるように鞄を持って立ち上がり

知夏に小さく手を振った


「じゃあね」


「うん、また明日ね」


後ろの席の飯田に舌打ちされる前に逃げ出そうと五歩で入り口に到着する

相変わらずニコニコ尻尾を振る涼太に鞄を取られた


「重くない?」


「ぜ〜んぜんっ」


「ありがとう」


並んで歩くと同級生の驚いたような視線を向けられる

男子からの意味はわからないけれど

女子は知夏から聞いたような
『モテる』涼太の所為なんだろう


靴を履き替えると
決まって手を繋いでくる涼太

もう恥ずかしくて顔をあげられそうにない

それなのに


「眞子先輩、お昼休みはごめんなさい
ちゃんと教室まで帰れましたか?」


「・・・帰れる、よ」


四歳から通っている桐葉で
迷子になるなら・・・それは方向音痴だ

本当は涼太を見上げて文句のひとつも言いたいけれど

少し火照った頬はそれを邪魔していてもどかしい


「眞子先輩?今日は買い物とか用事ないですか?」


「・・・うん」


「眞子先輩?」


あ゛ーーーーーーーーっ

反応薄の私に気付かれてしまったっ






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