後輩くんはワンコ時々オオカミ


結局、午前中ヒソヒソと噂のネタにされた所為で

身体中に力が入っていたのか
お昼休みに入る前にやってきた頭痛で
机に突っ伏してしまった


「眞子先輩?」


後頭部で聞いた涼太の声に顔を上げる

視界の隅に嫌でも飛び込んでくるクラスメイトの視線に

たぶん酷い顔をしていたんだと思う


「ごめん涼太。今日お昼行けない」


そう言ってまた机に突っ伏す


「・・・眞子先輩」


机の横で蹲み込んだであろう気配がして


「ん?」


声だけ返事をしてみる

すると涼太は

「保健室行きますか?」

囁くような声を出した

・・・そうだ

いつも鎮痛剤は持っているから
何かお腹に入れてそれを飲んで
午後からの授業を保健室ってのもアリだと思いついて


「・・・うん」


同じように小さく囁けば


「付き添います」


どのみち心配するに決まってるから
ここは素直に付き添ってもらおうと顔を上げた


お弁当袋を持って立ち上がって
半歩前を歩く涼太の袖を掴む


またクラスメイトのヒソヒソが聞こえてきたけれど

耳に蓋をするように
周りの声をシャットアウトした


廊下に出るとすぐ


「眞子先輩」


涼太はサッと私の手を取った


「本当は抱き上げて連れて行きたいんですけど
今日は噂のタネにされているから我慢しますね
その代わり、辛くなったら言って下さい」


私の歩調に合わせてくれながら


「眞子先輩」


何度も心配そうに声をかけてくれる涼太は
真っ直ぐ私のことだけを見てくれている

そんな涼太を見るだけで

なんだか周りのことを気にし過ぎて
体調まで崩してしまった自分が馬鹿らしくなった










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