後輩くんはワンコ時々オオカミ



side 涼太




「・・・・・・眞子先輩」



眞子先輩の肩に埋めていた顔を上げれば

真っ直ぐ俺を見つめる眞子先輩と視線が交わった


ヤキモチだと口走った俺に
眞子先輩は“取り越し苦労”だと笑った


・・・・・・ヤバイ


無自覚なのは気付いていたけれど
ここまで周りのことに関心が無いとは思ってもみなかった


でも・・・それを説明するかどうかは別のこと


「帰りましょう」


「ん?・・・うん」


サッと立ち上がって眞子先輩の手を掴んだ


ぎこちないけれど
ちゃんと絡んだ指に視線を落として
少しホッとする


眞子先輩の鞄を持った右手と繋いだ左手

両手が眞子先輩で塞がってるって思うだけで
とてつもなく安心感が広がるのは俺がガキだからだろうか・・・

少しでも眞子先輩に触れていたい

眞子先輩だって触れたいと思うのは俺だけでいい


頭をめぐる色々が多すぎて
いつもより口数が少なくなっていて

それが眞子先輩を不安にさせているなんて

ちっとも思わなかった



「・・・た、涼太?」


「・・・ん?あ、はい」


完璧トリップしていた俺を呼ぶ眞子先輩の声に反応が遅れた


「大丈夫?」


見上げる瞳は不安そうに揺れている


「大丈夫」


「お茶、飲んでく?」


「・・・はいっ」


お茶ひとつで気分が上がる俺は
単純な奴なんだと思う









< 72 / 79 >

この作品をシェア

pagetop