エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
食事を終えたあと、とうとう腹を据えかねた彼が動いた。

当然、麗しい体裁は乱さぬまま。

「少し彩葉さんとふたりでお話ししてきてもよろしいでしょうか。庭園の花がとても綺麗なので」

「もちろん、いってらっしゃい!」

「私たちはコーヒーを飲みながら待っているから、ゆっくり見てきておいで」

彼は、さぁ、とばかりに目で訴えてくる。

はたから見れば彼のそれは笑顔に見えただろう。しかし私が垣間見た鋭い眼差しは、鷲や鷹などの猛禽類の持つそれに似ていた。

「……言って参ります」

額に汗を滲ませながら、私は彼のあとについていく。

婚約に否定的とはいえ、私の態度は反抗的すぎたかもしれない。仕返しに怯えてびくびくする。

彼とは十数年というブランクがある。最後に話をしたのは子どもの頃だ。

大人になった彼がどんな態度を取るのか、何を言い出すのかも未知数。
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