エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
私だって、代わりに千葉さんが叱られるとは思わなかった。驚いて目を剥く。

「部長、お言葉ですが、早風さんは体調が――」

「そんなもの、風邪薬でも飲んでおけば治るだろう。体調管理がなってない証拠だ!」

説明すら無駄に思えてきて、うっと押し黙る。

もしかして部長は、心臓の具合がよくないと相談したことすら忘れてしまったのだろうか。

困惑していると、千葉さんが声を押し殺して反論した。

「お言葉ですが部長。今のこの労働環境では、体調管理など不可能です。加藤さんが倒れたこと、お忘れですか?」

その場に緊張が走る。かつて権蔵さんが身を置いていた労働環境を鑑みれば、過労が原因で倒れたことは目に見えている。

一瞬気まずそうに視線を泳がせた部長だったが、開き直ったのか、しゃあしゃあと言い放った。

「加藤さんは歳だった。仕方のないことだ」

「なっ……そんな言い方は――」

これにはカッと頭に血が上った。

仕方がないでは済まされない。権蔵さんは命を落としかけたんだ。

けれど、私がかみつくより先に、千葉さんが声を荒げる。
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