エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
そんな大切なこと、普通忘れる……? 信じられない顔で母を睨む。

「それにしてもあの頃から、透佳くんは結婚の約束を守ろうと心に決めていたんだな」

父の言葉に、私はごくりと息を呑んだ。

「もしかしたら、振り袖の贈り物は、透佳くんのプロポーズだったのかもしれないわね。お前は俺のものだぞ、なんて、きゃーっ」

自分で言ってて恥ずかしくなったのか、母は頬に手を当てて身をよじる。

その途端、車の進路が左右にグラグラ揺れ始めたから、私と父は慌ててシートにしがみついた。

「母さん! どうでもいいから、運転に集中してくれ!」

「あらごめんなさい、つい興奮しちゃって」

ホホホ、と笑いながら運転を立て直す。

私は後部座席にもたれ、はぁぁぁと大きなため息を漏らした。


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